Works施工事例

思い出も積み重ねるレンガ造りの洋館 帯広市 Sさま

十勝の景色に惚れ込んで東京から移住したSさんご夫妻。
「テレビを見ない」というほどこの地の暮らしが気に入っています。

伝統的な洋館をイメージして

札幌から車で日勝峠を越え十勝平野に下ってくると、どこまでも続く畑や牧場が目に入り、ここは『大陸』なんだと実感します。日本離れした雄大な景色が楽しめる場所、そこが十勝です。

建物から突き出た位置にあるコンサバトリー(温室)は、ダイニングとつながっており、アウトドアリビングの趣。床暖房も入っているので冬も楽しめる。晴れた日には彼方の日高連峰まで見渡せる

Sさまご夫妻もそんな景色が気に入って帯広市郊外に居を構えました。「東京にいた頃は自然を求めてわざわざ軽井沢や八ヶ岳まで出かけましたが、ここは家にいながらにして雄大な景色が楽しめる」とご主人。

ジョージアン様式の外観。左の建物は車庫

Sさまが教員として帯広に赴任してきた当初は借家に住んでいました。これがなかなか快適だったそう。東京の家と違って冬の室内は暖かくて快適。親切な隣人のおかげで山菜採りなど自然の楽しみ方も覚えた夫妻は、定住を決意しました。

ケーキは奥さまの手作り。このコーヒーテーブルも奥さまが作った

見つけた土地は、勤務先から車で15分ほどですが、牧場や畑が点在するのどかな場所です。白樺林を切り拓いた分譲地は、別荘地のような雰囲気。この絶好のロケーションを生かしたいと家づくりの構想を練り始めました。

奥様は東京出身、アメリカ留学の経験があり、世界的な高級ホテルチェーン・リッツカールトンのインテリアなどがお気に入り。伝統様式を取り入れた厳かなインテリアの洋館を建てることが夢でした。Sさんが身長190cmと長身で日本規格の建材では体に合わないこともあり、本格的な輸入住宅を建てようと考えました。

プランは外観から

「普通は間取りを考えてから外観デザインなんですけど、私たちは順番が逆でした」と尚子さん。アメリカの開拓初期に流行したジョージアン様式を忠実に再現、2階に9つの同じ大きさの窓が規則正しく並んだシンメトリー(左右対称)デザインに、レンガ積みの重厚な外観。この外観に合うようにプランを考えていったというこだわりぶり。室内のインテリアもいたるところにシンメトリーが隠されています。

Sさまは茶道にも造詣が深い。舟底風の天井やサクラの床柱など和室にも凝った

細かなこだわりは、北米の輸入住宅特有のモールディング(装飾)にまで。通常はアメリカでもプラスチック系の擬木を使いますが、尚子さんは、木で作ってほしいとお願いします。そこでとかち工房も一肌脱いでかなりの部分を木製にし、オリジナルデザインの素敵なモールディングができあがりました。

多目的ホールの広大な吹き抜けが見る物を圧倒する
キッチンからダイニング、コンサバトリーを望む。シンメトリーがここでも利いていて、額に納められた絵のようだ

100年後も残る家に

ここまでこだわったのは、見た目の豪華さだけを考えたからではありません。アメリカでは築100年の住宅が高い値段で取引されるなど、手入れをすることで常に高い資産価値を維持する仕組みができあがっています。

キッチンのコーナー部分は収納スペースになっている。奥行きのあるものでも収納できて便利

一度建てた家は大切にして3代後まで使い続ける。そこには、まだ裕福ではなかったアメリカ開拓当初の物を大切にする精神が残っているのかもしれません。もちろんそのためには、できるだけ良い材料を使い、しっかりとした構造で建てることが重要です。

客間は高原リゾートのような雰囲気

「古くなって汚らしく見える家にはしたくなかった」そこで外装もレンガを使うなど、可能な範囲で耐久性があり、年月とともに味わいが増すような建材を使っているそうです。

Sさまは、この家をより魅力的にするため、長期計画でガーデニングを考えています。「10年、20年後の姿を想像しながら形を整えていきたい」そうです。できるだけ敷地内の樹木は残しながら、和室のそばは日本庭園風にするなど、構想はふくらみます。2階建ての、遠くから見ると住宅のような大型車庫には日曜大工道具が運び込まれており、ここがSさまの作業場になります。

お子さまも雄大な景色に見守られて、のびのび育つ

「日本人は方位にこだわりすぎて景色を楽しむということを忘れているのでは?」とSさまは言います。この家は広大な畑と日高連峰を絵のように眺めたかったので南西方向にリビングがあります。真南の方角ではありませんが、むしろ好都合な面もあるとか。「玄関が真北にならないのでそちらにも陽が当たりますし、この配置で良かったと思います」

家族を大切にする心

家の中には、アンティークがいっぱい。でもそれは単なる懐古趣味ではありません。コーヒーをいただいたときのカップはお祖母さんの使っていたものでした。また、2階の寝室に掲げられた絵もお祖母さんが描いたもの。家族や家族の思い出を大切にする心が素敵です。

造りつけの家具も含めてクラシカルな雰囲気漂うダイニング

夜は星空の下、コンサバトリー(温室)で夫婦二人お酒を飲むことも。「とにかく二人でよく話しますね」「実はまだテレビを据え付けてないんです」とご夫婦。別段テレビ嫌いというわけでもないそうですが、この素敵な家にいると、テレビなんてどうでも良くなるのかもしれませんね。