Works施工事例

郊外で楽しむスローライフ 中札内村 Tさま

ヨーロッパ暮らしの経験をもとに、描き上げた新居のスケッチは数十枚に… その熱意が職人の心を動かしました。

ゆとりある暮らしを求めて

街中に住むことは最初から考えていませんでした。市街地の外れにある職場から10㎞以内で敷地は300坪以上というのが条件でした。わたしたちが思い描いていたのは、きれいに手入れされた坪庭を持つ日本的住宅のイメージではなく、外国の住宅地のようにゆったりとした敷地に建つ住宅だったのです。

しかし、十勝といえども希望するような物件はなかなか見つかりませんでした。ようやく見つけた分譲地も良い区画は既に売約済み。しばらくして見つけたのがこの土地でした。

林を見下ろす丘に建つ。夏は木々の葉っぱが日射しを和らげ、冬は葉が落ちて逆に日当たりが良くなる

スーパーなどは車で5分ほどと近く、職場へも途中に信号がほとんどないので20分ほどで行けます。隣の区画を購入された方も素敵な人で、「ここなら暮らしていけそうだ」と購入したのが2年前の6月。まずは妻と草刈り。それから具体的なプランを練り始めました。

職場の同僚がとかち工房さんで建てているのですが、家の雰囲気がいいのと、オーナーの要求に対し実に細かなところまで応えているところが気に入りました。これは技術がないとできないことだと思います。

また、とかち工房さんは住宅視察や建材買い付けのためにヨーロッパまで直接行くことがあるそうです。そうしたことで家づくりのセンスが磨かれていくのでしょう。結局見積もりはとかち工房さんしか頼んでいません。

モチーフは『森の中の開けた場所』

プランは自分で考えたものがほぼそのままかたちになっています。もちろん細かなところは専門家の観点から変更が加えられた部分はありますが。

家は、林の一部を切り拓いた場所に建っています。間取りは森の中になぞらえてイメージをふくらませました。玄関から入ると2本の木の間をくぐってリビングという『森の中の開けた場所』に出るという設定です。ここで言う木とは、壁のコーナーを円く処理した部分で表しています。

玄関で靴を脱いで上がると造り付けのクローゼットと靴箱がある

プランは、1階は仕事や来客用にも使うオープンでパブリックな空間ですが、2階は完全にプライベート、あるいは親しい人を招くゲストスペースとして使います。動線上もはっきりしたかったので、洗面所や風呂は2階にし、玄関からリビングに入る扉を開けると2階への階段がちょうど隠れるようにしました。また、リビングの一角からはすべての部屋のドアが見えるようにしました。家の気配がすべてわかると言っていいかもしれません。

以前スコットランドで築150年の家に住んでいたことがあります。小さいけれど機能的にまとまった家でした。今回の家も無駄なスペースができないよう工夫しました。たとえば、階段下は収納と電気温水器の設置スペース、1階トイレの手洗い所に利用しています。

左:すべての部屋のドアが見えるリビングのポジション。2階の手すりは当初木製の予定だったが、塗り壁仕上げに変更、その際重く見えないようスリットの形状にこだわった
右:玄関からリビングに通じるドアを開けると階段がちょうど死角になり、リビング、書斎、食堂しか見えない。プライバシーに配慮した設計に海外暮らしの経験が生きている

後藤社長と担当者の名コンビ

台所は詳細なイメージスケッチを描いてすべて造作してもらったのですが、できあがりが私のスケッチ通りだったのでびっくり。建築中に何度も現場へ足を運びましたが、私の描いたスケッチのコピーがあちこち張られていて、それを見ながら職人さんが仕事していました。

書斎は半円形で林にせり出したようなかたち。窓から見える自然が心を癒してくれる。双眼鏡やカメラも必需品

後藤社長は、こちらの温めているプランやアイディアに「これ、おもしろいね」と乗ってきてくれ、「やりましょう」と自ら図面を引ける人です。一方担当者は、現場のことを考えて時折みけんにシワを寄せながらも後藤さんの話を聞いてます。私の家は、このお2人の名コンビが中心となってかたちになったのだと思います。

1階の予備室と2階の水回りスペースだけは青を使っている。カーテンはヨット柄でさわやかなイメージ。トイレの仕切りがカーテンなのは、プライベートゾーンだから

打ち合わせに何度も事務所へ伺いましたが、そのたびに数時間も話しこみ、とても楽しく過ごせました。後藤社長からは、面倒な壁紙などの色合わせで的確なアドバイスもいただき、出来上がってみて言われたとおりだなあとひとしきり感心しました。家づくりのストレスというものは全く感じませんでしたね。

新居に移って生活が一変

ほぼスケッチ通りに仕上がったというモダンな感じのキッチン

昨年末に引っ越してから生活はすっかり変わりました。寝室は、朝の光が射し込むので朝日が顔を出すと目が覚めます。週末になると、薪ストーブに火を点して暖かさを楽しみ、書斎では読書に疲れたときに林を眺め、野鳥のさえずりや小動物がの愛らしい姿に心洗われます。お風呂からは山並みが眺められ、人家は見えません。自然の中の一軒家のような感じです。

階段下のスペースを利用して造作した1階手洗い。鏡の上の傾斜が階段裏であることを物語る

家を建てるということは、自分たちが思い描く理想の暮らしをかたちにすることでもあると思います。幸いにしてわたしたちは理想をかたちにすることができました。それは本当に多くの方とのめぐり会いと力添えに支えられたもの。感謝の気持ちで一杯です。

春になれば、敷地内の林の手入れをして、少しずつ環境を整えていきたいと思っています。